2016年5月13日金曜日

横手

空気が、神聖と言えるレベルで澄んでいる場所。


空は広く、夕焼けは言葉にできぬ程の迫力と瞬間の美しさに満ちている。


人の笑顔は温かく、みな真面目。




何度想い出しても、胸がときめく場所。


自分の故郷ではないのに、帰りたくなって、苦しくなる。


そこが、私の母の故郷、横手。





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私の祖父、祖母、そして

そのまた父・母と、あまり詳しくないのだが、きっと何代も住んできた場所なのだろう。



小さい頃、何度か行った記憶は、ほとんどが大雪の中だった。

滑り台から勢いよく降りて、そのまま数メートル積もった雪に沈んでいったりもした。

今思うと、雪の怖さを知らない、東京もんのすることだ。。笑




母は、あんなに厳しくも綺麗な場所から、一人きりで上京し

何度、故郷への想いに胸が焦がれただろう、と想う。



二年前、母と一緒に横手へ行った。

冠婚葬祭以外で行くのは、とても久しぶりだった。


母と、やっと一人で歩けるようになった息子と一緒に、横手へ。

あの旅行は、私の人生にとって、とても意味ある時間であり宝だ。


長旅の末、横手駅へと降り立つ。

もう上京してからの人生の方が圧倒的に多い母からすると、ここは知らない街と同じくらい、馴染みの無い風景だそうだ。

でも、母が生まれ育った街へと散歩した時

「どこも変わってわからないな〜」っといいつつ、キョロキョロと周りを見渡しながら歩く母に向かって


『おかえり』

何度も、何度も、私には聞こえていた。

『おかえり』

涙が出そうになった。



街が、山が、土地が

母を、歓迎しているのが、わかった。



母が生まれ育ったその場所は

馴染みの少ない私にとっても、大切な場所なのだ。


『おかえり』


街を歩く母を見て、初めて感じた。


それは【母】ではなく

【みきこちゃん】の姿。


あぁ、こんなにも気が弱く、繊細で、優しくて

そんな子が、一人家族から離れて、東京で暮らしていたんだ。


綺麗な空気と水が当たり前の暮らしを離れ

東京で顔を洗う度、湿疹が出たと言っていた。


湿疹が出たのは、きっと身体だけではないのだろう。



若き日の母を想い、そんな母を優しく、いつだって想っていた横手という土地を想った。

やっぱり、この場所には、感謝と尊敬の念しか浮かばない。




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全国的に見て、決してメジャーではない土地。

なのに、若き日のお義父さんが工場を持ったその場所も、横手だった。



そして、その工場でのモノ作りは今も続いていて

母体の会社は、今旦那さんが経営している。


血縁関係があり、私のほうが横手との繋がりが濃ゆいはずなのに

毎年数回、かれこれ20年弱横手に通っている旦那さんのほうが、横手に詳しい。

私は、それこそ冠婚葬祭で、数えられるくらいしか行ったことがなかった。



旦那さんの繋がりのおかげもあって、私は二年前から、毎年横手に行っている。

どうしても、行かずにはいられないのだ。


横手の雪は、凄い。

だから、行くのは決まって夏。


一年の半分は冬みたいなものなので、横手の夏は特別である。

盆地だから暑いけど、その暑さの中に、たくさんの命がキラキラ輝いている。

本当に、素敵な夏。



夏が近づいてくると、あの空が見たくなる。

澄みきった、新鮮な空気が吸いたくなる。

特別なものなんて、なーんにもないよ!って地元の人はみんな言うけど

その全てが特別だから、仕方が無い。


今年も、あの奇跡みたいな空間へ。



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